私の友人でSEをしている小林氏(仮称・当時32歳)は、新卒で就職した会社の給料がイマイチだと3年目で収入アップを目的として仕事を変え、見事成功した経験があります。そのため、仕事を変えるということに対してはあまり危機感を持っておらず、職場を変えて給料がアップするならそれでよし、と考えていたようです。しかし2回目の転職では職場の選び方を間違えてしまい、仕事探しで失敗した事例になってしまいました。
転職の経緯
小林氏が働いているのは外資系IT企業で、基本的に給料は能力給となっています。そのため、スキルがある人なら同じ年齢でも給料が他の人よりも高くなるわけで、小林氏はそれを期待して次の職場として選んだのかもしれません。しかし、スキルがある人でも、収入アップにつながるような結果を出すためには、規模が大きなプロジェクトに参加しなければいけないわけで、工数が膨大にかかる作業をコツコツと積み上げていくのはIT業界で働くSE職なら誰もが知っていることです。小林氏は、自分自身のプログラミングスキルにある程度の自信があったので、それまでと同じ働き方で高収入を得られると考えたようですが、そう甘くはありませんでした。
そもそも小林氏は前職に不満を抱えていたというわけではなく、残業時間がそれほど多くない職場でそれなりに満足していたようです。しかし、残業手当が少ないことで給料が上がる見込みがないことや、30代、40代になってからの収入を見てもそれほど高くならないことに不安を感じ、若いうちにスキルを活かして高収入の企業へ転職したいと考えたことが、職場を変えた理由です。
JACリクルートメントを使って失敗
小林氏が仕事探しをした際には、ネットを使って複数のサイトやエージェントに登録していました。
その中でもJACリクルートメントというエージェントは、待遇面や収入面が良い外資系の企業とか大手企業からの求人情報が多く、小林氏はそこからいくつかの企業を選んで応募し、待遇や生涯年収などをリサーチしながら気に入ったところに決めました。
仕事探しをする時には、もちろん収入や待遇は大切ですから、小林氏のような選び方をする人は多いと思います。しかし、それだけでは新しい職場が自分にあっているとは言えないわけですし、成功か失敗か最終的な決め手となるのはやはり職場の雰囲気とか労働環境、人間関係のように求人情報には記載されていない部分が占める部分が大きいので、小林氏の場合には、リサーチ不足だったのかなという気がします。
どんな所が失敗だったか
現在、小林氏は外資系IT企業でSEとして働いていますが、給料は以前よりも高くなったものの、精神的なプレッシャーやストレスが大きく、決して仕事を変えて満足しているというわけではありません。
どんな所が失敗だったのかを振り返ってみると、転職活動をしている時からいくつかのサインはあったようです。しかし、より高待遇の仕事につきたいということしか頭になかった小林氏、そうした危険なサインに気づくことがなく、仕事を決めてしまったというわけです。
小林氏が現在の職場に面接に行った時、面接官から「自宅まで遠いけど大丈夫?」と聞かれたそうです。遠いと言っても電車で1時間程度だったのですが、小林氏はその真意がよく分からないまま「電車を乗り継いで1時間程度なので大丈夫です」と答えました。そして、その真意を知るのは入社してからとなり、面接官が「遅くまで残業することになって、帰宅できないかもしれないよ」という意味で質問したということを後から知ることになりました。
結局、残業が多くて帰宅時間が遅くなる日が続くにつれ、毎日片道1時間の通勤時間がもったいないと感じるようになり、職場のそばでアパートを借りる結果になりました。不幸中の幸いで、彼の企業は福利厚生面がバツグンに良く、アパートは企業の借り上げということで対応してもらえたそうなので、コスト的には負担はありませんでしたが、彼は今、毎日自転車を使って通勤しています。
転職失敗を繰り返さないためのアドバイス
小林氏のように、それまでの職場に大きな不満があるわけではないけれど、より高待遇の仕事に変えたいという理由で転職する際には、職場を変えることでどんなリスクがあるのかを最初にしっかり理解しておくことが必要だと思います。
特にIT系企業で働くSEは、残業が多い事に不満を抱えている人がたくさんいるので、残業時間はどうなるのか、残業手当はどこまで付くのか、そしてSE職の離職率はどうなっているのか、という点をあらかじめできる範囲でリサーチしておけば、仕事を変えた後に大きな不満が起こってしまうリスクを防げるような気がしますね。小林氏の場合、こうしたリサーチが不足していたわけですし、せっかく大手企業の求人を多く取り扱うエージェントを活用していたのに、そうした質問をしなかったことは小林氏のミスだと思います。