転職をして新しい職場で心機一転働く場合、実際にその行動が正しかったのか失敗だったのかは、すぐに判断しにくいものです。私の友人である中川君(仮称・当時27歳)の場合も、職場を変えてしばらく経ってから、失敗だったかなと感じ始めたパターンです。事例をご紹介しましょう。
転職の経緯
中川君は2017年現在、メーカー系IT企業でSEとして働いています。
もともとプログラミングが得意だったので、今の仕事をする前もSEでした。前職もIT系の企業だったのですが、そこではサービス残業がひどく、まるで社畜のように毎日遅くまで残業の日々が続いたそうです。中川君は終電にも間に合わない事が多く、帰れない時にはオフィスの床に寝袋でごろりと転がって寝ていたのだとか。残業代が支給されるなら、近くのホテルに行くという方法もあるのでしょうけれど、経済的にそうした余裕は全くなかった中川君にとっては、帰れないならずっと仕事をするか事務所で寝るというぐらいの選択肢しかありませんでした。
中川君、実は学校を卒業して2年目に長く付き合っていた彼女とゴールインしたのですが、最初は残業に理解を示してくれていた奥さんも、そうした日々が続くことにきっとイライラしたのだと思います。楽しいはずの新婚生活がすれ違いの日々になってしまい、夫婦の会話が少なくなって離婚の危機を実感したことが、彼の転職理由でした。
アデコを利用して失敗
仕事を変えようかなと思っても、養う家族がいる場合にはなかなか難しいものです。
仕事が見つかりにくいというわけではありませんが、精神的に不安な要素は大きくなってしまいます。それは中川君も同じで、彼は仕事を変えるなら、次の仕事を見つけてからでないと辞められないと判断し、SEの求人を多く取り扱っているアデコを活用して仕事探しをしました。アデコは同じ職種でも他業種へ移りたいと考えている人にピッタリのエージェントとして人気があり、多方向からの求人情報を幅広く取り扱っているのが特徴です。
中川君の仕事探しでは、アデコのエージェントとカウンセリングしながら、SE職を探すことにしたようですが、完全な他業種というのはなかなか見つからず、IT系企業でも社風が変われば職場の雰囲気は変わりますよというアドバイスを受け、最終的には現在の職場を選んだようです。
SEとしてのスキルは申し分ない中川君なので、スキルや経験的には全く問題なく、新しい仕事は比較的すぐに決まったようです。彼の奥さんも仕事を変えることでプライベートな時間が多くなると喜んでいたようです。
どんな所が失敗だったか?
しかし、新しい職場で働き始めてからすぐに、彼は職場は変わっても働き方はそれほど大きく変わらないことに気づきました。
現在の職場では、残業代は月に30時間までは支給されるというルールになっているので、その分は前職と比べるとプラスです。しかし、残業が全くなくなるというわけではなく、終電とまではいかなくても毎日遅くまで仕事をすることは多く、奥さんは最初のうちは帰宅時間が早くなったことで喜んでいたようですが、毎日10時や11時でなければ帰宅できないN君に対して「ほとんど変わっていない」と不満を持っているようです。
中川君の転職は、成功か失敗かと言えば、きっと失敗だと思います。
その理由は、やはり企業選びを間違えたのかなという気がしますね。IT系なら必ずしも残業が多いというわけではありませんし、SEでも残業せずに帰宅できる企業もたくさんあります。しかし、そうした所から求人募集が出ていなかったのか、うまく探せなかったのか、それとも待遇がイマイチで興味が持てなかったのか、いろいろな理由はあると思いますが、似たような同業種の企業に職場を変えても、働き方はそれほど大きく変わるわけではなかったということを、中川君は身をもって体験しました。
転職失敗を繰り返さないためのアドバイス
中川君は現在の職場でも不満を抱えています。しかし、不満を持ったからと言ってすぐに辞めることはできないので、この環境でも何とかスキルや経験を積んで次の仕事探しに結び付けたいと、ポジティブに考えるようにしているようですね。奥さんは、自宅で中川君の帰りを待つのが疲れてしまい、今では自分も外に仕事に出て働き始めたと聞いています。
失敗を繰り返さないためには、次の仕事探しでは職種や業種にこだわりすぎず、しっかりとその企業の職場環境や人間関係など、求人募集に記載されていない部分についてもリサーチすることが大切だと思います。彼が活用したエージェントからも、そうした情報はもらっていたようなのですが、ヒアリングでしっかりとしたコミュニケーションが取れていなかったのかな、という気もします。以前の職場と比べれば、残業時間が減って残業代が支給されるようになっただけでもプラスと考えることはできますが、彼が考える理想的な職場ではなかったようですね。中川君はこの経験から確実に何かを学び、次の仕事探しで活かすことができる・・・そう願っています。